闘病記「100針への道」

第3巻 切腹

注意! 筆者の予想以上に長文です。面倒だから分割していません。エディタにコピーして読むことをお薦めします。

 東京の会社を辞め、札幌に帰ってきて親父の会社でコンピュータを任されることになり、妻と出会い結婚もした。

私は以前から内蔵が弱く、痔でもないのに大腸から出血して直腸カメラのお世話になっていました。

胃カメラも何度もやっています。

1994年の春頃、いつもの腹痛だと思ったらちょっと場所が違うので、

行き付けの大○胃腸科病院の高杉(仮名)先生のところに診察に行く。

胃のあたりが痛いと言うと、胃カメラとエコー(超音波)のどっちがいい?

と聞かれたので、迷わずエコーを選ぶ。

だって「おええっ!」ってなるじゃん。

でも、これが功を奏する。

胃カメラでは発見出来無い病気だったのだ!

エコーで診察していると「おやぁ?・・・いやいや・・・ええぇっ!・・・ははぁ〜ん、これか・・・」

あのね、患者をいきなり不安にさせるようなこと言わないでよ。

再度、診察室に呼ばれて病名を告げられる。

ま、まさか胃ガンとかじゃないよね?・・・ドキドキ

・・・胆石でした。8ミリ以上のが4つ以上確認出来たそうです。

普通、ここまで石があると角度や状態によっては、のたうち回る位に痛いらしい。

人によっては出産の次に痛いと言う人もいる。

私は・・・ちょっとお腹こわした程度の痛さでした。

 

「手術しなくちゃなりませんか?」

 「しなくて済むかもしれないよ」

「あぁ、なんか超音波だかで外から破壊するって奴ですか?」

 「ここまで大きくなってて数もあるから、その方法は使えないわ」

「じゃ、どうすればいいんですか?」

 「石を溶かす作用のある薬を飲みながら、食事療法を併用して様子をみましょう」

「食事療法って、どの程度ですか?」

 「糖尿病患者よりマシな程度だわ」

「ど、どの位の期間ですか?」

 「最低でも半年だね。それでも変化がなければ切った方がいいよ」

 安心した反面、胆石ってもう少し年食ってからなる病気なんじゃないの?とは思いました。

当時29歳でしたから。

それから半年間、我慢して食事療法しましたよ。

油ものは一切駄目ってのを。

体重は7〜8キロ減ったかな。

そして、1994年秋、再度エコー検査。

・・・結果、何も変化なし!増えてもいないし、減ってもいない。

わははは!食事療法に苦労したのは何だったんだい!

広島風お好み焼き食べに行っても、日本そば&ソース控え目&マヨネーズ無し&ラード無しで我慢したのに。

でも、私はあっさり「じゃ、切りましょう」と決断しました。

今更綺麗な身体じゃないし、一生食事療法なんて辛いぞ。

痛いのは一時じゃん。久々に入院もいいもんじゃないかと思いましたとさ。

 

 しかし、仕事の関係上いつでも入院出来る訳じゃない。

タイミング的には2月しかない。

それに大○胃腸科病院には手術設備が無い。

札幌開○病院の壇○先生を紹介される。

業界ではかなり有名な先生らしい。いい意味で。

某爺とはエライ違いだ。

そして、1995年2月入院したのだ。

多分、大○胃腸科病院での検査の結果と思われる資料を持っていったにも関わらず、

各種検査は全部やりなおすのね。

はぁ・・・万が一ってことがあるから?責任問題?苦しい検査も色々あるのよ?

 

 胃カメラ :説明するまでもないですね。すぐにオエッとなる私には非常にツライ検査です。

       空気を入れて膨らませるからゲップを我慢しろだとぉ!出来るかぁ〜!げふふっ!

       検査前の咽の感覚を多少麻痺させるのも全く役立たずだぞ!

 

 直腸カメラ:胃カメラの直腸版。口じゃなく、肛門から入れる。

       肛門を他人に見られるのは恥ずかしいが、私にすると胃カメラよりはマシ。

       肛門にローションのような潤滑剤を塗り、ゆっくりと入ってくる。

       前立腺は刺激しないでね。具体的にどこか知らないけど。

勃起したらもっと恥ずかしいよ。

       でも、それどころじゃない。下っ腹が苦しいって感じ。

       男性だとせいぜい玉の裏しか見られないけど、女性だと近いから丸見えなのね。

 

 心電図  :一応、手術の前はしますね。今回は間違いなく全身麻酔だし。

さすがに上半身麻酔ってのはないでしょ。

       上半身のあちこちにタコチューのような電極をつけて、しばらくすると終わり。

痛くも痒くもない。楽勝。

 

 不明   :直接、胆管だか胆嚢だか十二指腸だかを見るとか言って、別の病院で検査しました。

       数ある検査の中で一番辛かったのですが、胃カメラを飲んだまま何度も寝返りをさせられ、

       寝ているベッドごと色々と傾けられるの。よく解んないけど、苦しかったっす。

 

 肺活量  :何の意味があるんだろう?ちなみに5500。

ちっ!高校の頃は6000位あったのに。

       ちなみに背筋は中学で200キロ。

友人が対抗して200キロ出して椎間板ヘルニアになった。

 

 他にも検査したかもしれないけど、覚えてないや。

印象に残ってないってことは大したことなかったはず。

入院してから一週間、検査ばっかし。

不思議だよね。こっちは痛くも痒くもないのにね。なんでこんなに辛い検査してるんだろうと思うわ。

手術予定の前々日位から慌ただしくなってきます。全身麻酔ってことで胃腸を空っぽにしなくちゃならないんだって。

簡単じゃないよね。約丸2日食事無し。

酸っぱくて不味い液体を500cc飲むとか、下剤を飲むとか、2時間以内にスポーツドリンクのようなのを2000cc飲むとか。

普段から下痢気味なんだから放っておけば大抵出るって。

もう、しまいにゃ水分しか出ないよ。シャーシャーいってるもん。肛門が痛いよ。

 さて剃毛です。

初めての手術の時は若かったので、年上の看護婦さんだったけど、今は大抵が年下の看護婦さんなのよ。

恥ずかしいよね。お願い!年配の看護婦さんに当たって!

それで勃起するのはまずいけど。

わぁぁっ!若い!まるでイメクラ(そんなのがあるのかは知らないが)みたいじゃん!

「はい、お腹出して、パンツをギリギリまで下げて下さい」

ふふふ、ギリギリって何処までかなぁ?

ちんちんが見えない程度ね。はい。

でも途中で元気になって、ぼよよ〜んっ!ってなったら困るでしょ?

万が一、看護婦さんが近眼で顔を近づけていたら、チンビンタするかもよ。

私の心配をよそにゾリゾリ剃られてる。

胸の下からお腹全体、おわっ!そこから下は男のデンジャラスゾーン

ありゃ?ちんちんの根本から上3センチ程で止めちゃったよ。

あ、そこまででいいんだ。ほっ。よく盲腸の手術で、ちんちんの毛まで剃ると言いますね。

病院によるらしいです。しかし、剃る場合は何処まで剃るんでしょうね?

回りだけ?袋は?裏筋は?肛門の回りは?尻っぺたは?

 

 続きまして浣腸です。

水分しか出ないのに、まだ駄目押しするのかぁ!

シクシク(T_T)、解りましたよ。

ご主人様は誰ですか?げげっ!剃毛と同じ看護婦さん。

美人じゃないけど結構タイプなんだよな。

胸大きいし。

看護婦さんに連れられてプレイルームならぬ、トイレに行く。

「パジャマとパンツを膝まで下げて、

両手を壁について、お尻を突きだして下さい」

ひえぇ〜っ!そ、そんな恥ずかしい格好をしなくちゃならないのぉ〜!

でも、四つん這いよりマシかぁ?

それにその浣腸は巨大な注射器タイプじゃないのね。

点滴みたいな奴。イチジクじゃ駄目なのね。観念しました。

ご主人様、お願いします。

あ、何か肛門に塗られた。

点滴みたいな浣腸の先が肛門を探ってる。

あ、入ってきた。

うっ!意外と・・・奥まで入れるのね・・・。

「はぁ〜ぃ、入れますよ。我慢して下さいね」

管の途中にあったクリップを外すと同時に勢いよくグリセリン溶液が直腸に注ぎ込まれる。

なんだかノリがエロ小説になってないかぁ?おかしいな?才能有り?なんちゃって。

さすがに「この洗面器にしなさい」とか

「私の見ている前でするのよ」とかは言われません。

当たり前ですが。「出来るだけ我慢して下さいね。その方がついでに宿便も出ますよ」この宿便。

結構大人になるまで祝便だと思ってました。

だから、出ると目出度いんだと。どんな便なんだよ!

3分も我慢出来ませんでした。一体、どの位入れられたんでしょう?

尻っぺたにハネ返る位にいきよいよく出ました。

もう、何もありません。勘弁して下さい。

え?浣腸の部分の文章が妙に長い?気のせいです。

私は決してマニアではありません。こう書いた方が面白いかなと思っただけです。

 

 最後にカテーテルです。

手術前、最中、術後はトイレに行けないので、膀胱まで管を入れてオシッコを抜くんだって。

ええぇ〜っ!ちんちんに管入れるの?

当然、自分じゃ出来無いよね?

妻にでさえじっくり見られたり触られたことないのに。

誰がやるの?勿論、看護婦さん?

とほほ、剃毛に続き浣腸もしたあなたなのね。

もしかして私の担当なの?

醜い裸体を見られた上に毛まで剃られ、肛門も見られて、とどめにちんちんですか。

何だかとっても情けない。

私は既に手術準備室にいます。ええ、手術当日です。

あ、看護婦さんが来た。「カテーテル入れますね」あんたは何度もやってるかも知れないけど、こっちは初めてなのよ。

「パンツ下げて下さい」

や、やさしくしてね・・・気分は処女。

恥ずかしがってる間もなく、あっさりちんちん持たれて、

ちゃっと消毒して、サクっと尿道に管が!いててっ!痛いよ、これ!

「女性は尿道口から膀胱まで近いからそうでもないけど、男性は長いから痛いのよね。余計なものついてるし、うふふ」

うふふじゃないだろ!先に言えよ!

その上、余計なものだとぉ〜!てめぇ、ヒィ〜ヒィ〜言わしたろかぁ〜!

いやいや今時カラムーチョの婆位しか言わないね。

でも、このカテーテルって勃起したらどうなるの?

心配入りません。入ってる間は勃ちません。勃たそうとも考えませんでしたけど。

 

 あ、まだありました。

人間黙っていても自然と分泌するものでオシッコ以外のもの。

そう!あなた!正解です。

胃液ですね。

胃の中が空なのに放っておいたらどうなります?

はい、又々正解です。

自分の胃の壁を解かしちゃうんですね。

これが胃酸過多による胃炎ですね。

そういうわけで、胃液も抜かなくてはならないのです。

さて、どうやって?

細い管を鼻から胃まで入れるんです。

これも痛いよ。

大体、鼻ってのは空気を出し入れして、匂いを嗅いで、鼻水が出て、鼻毛が生えるものなのよ。

異物を入れるとこではありません。

ちょっと水が入ってもツーンとくるでしょう?

あ、今度は違う看護婦さんだ。って婦長さんじゃない!ベテランだから上手いのかな。

それとも他に手のあいてる人がいなくて久々にってのは嫌だよ。

ああぁ、管が鼻に入ってくる。

ツーン!痛い!

かまわず押し込まれる。腰が引ける。

咽の上あたりで止まってるのが解る。

「ツバを飲み込むように、ゴクンってしてみて」

そんなこと言われても・・・鼻が・・・解りました。

やりますよ。やりゃいいんでしょ。ゴックン!一回目は失敗したらしい。

「もう一回」ゴックン!そのタイミングに合わせて管が咽を通る。

後はズリズリ胃まで入れられたみたい。涙が出てきてなんだか解りません。

解るのは細い管がずっと咽に居ること。

違和感の塊。元々鼻も悪いので、鼻での呼吸は無理。

口で呼吸することに。これは馴れてるんだけど、鼻から2本管が出てるから邪魔でしょうがない。

あー、もー、うざったい!

 

 手術にあたって今回数少ない楽なこと。

手術直前までどこか痛いわけじゃない。ふむふむ、これは当然。

それに下半身麻酔のあの痛い注射をしなくていいことです。

でへへ、全身麻酔ってガスでしょ?ラッキー!でも、麻酔が醒めたら痛いのは一緒だわな。

10年以上前と変って進化したものもあります。点滴の針です。

以前は点滴の度に針を刺していましたが、今はちょいと太めの針を刺して管だけ残して針抜くのね。

これなら多少曲げても大丈夫だわ。よしよし。

手術は単純に胆石だけを取り除くだけではありません。

また、出来るかもしれないからね。

胆石の入ってる胆嚢ごと摘出するのです。

え?盲腸と違って無くてもいいの?

あった方がいいけど、無くても何とかなるものなのです。

肝臓の機能の1つに胆汁を作るってのがあって、それを溜めておくのが胆嚢です。

胆嚢の中で濃縮された胆汁は食べ物(特に油物)を消化する際に、その消化吸収の効率を良くするために出てきます。

では、胆嚢がないとどうなるのか?薄い胆汁が出っ放しになるのです。

だから、脂っこい食事をすると通常よりも下痢しやすくなるのです。

胆石とは胆汁の成分がたまたま結晶化したものです。

誰でもなる可能性があります。

大きな石になる人もいれば、小さいうちに運良く総胆管を通って排泄してる人もいるのです。

この時、総胆管やファーター乳頭部に石が詰まると痛み、発熱と供に黄疸症状になったりします。

 

 そういえば、身体に色々付けられる前に壇○先生から手術の説明があった。

お腹に3〜4個所穴を開けて行う内視鏡手術だそうだ。

万が一、贅肉が厚くて届かない場合は開腹手術になる可能性もあるけど、多分大丈夫とのこと。

うむむ、内視鏡手術か・・・。

生命保険ってさ、入院給付金の他に手術のランクに応じてお金が出るのね。

一番軽いのが内視鏡手術、続いて開腹手術、最高ランクが開胸及び開頭手術なのね。

ま、しょうがないか。明らかに内視鏡手術の方が簡単だし、回復も早いもんね。

 

 全ての準備が整い、いよいよ手術です。

と言っても、今まで経験した手術と違い、手術室の中での記憶は無いからね。ほほほ。

手術準備室で何かの注射をされてから、戦闘機のパイロットのようなマスクが口元に。

「大きく深呼吸して下さい」麻酔科の先生なんだろうね。

すぅーっ、はぁーっ、すぅーっ、はぁーっ。

あの・・・マスクのふちが・・・

目に入ってるんですけど・・・

しかし、その先生は気が付いていないのか、かまわずマスクをバフバフと顔に押し付けてくる。

すぅーっ・・・バフバフバフ・・・はぁーっ・・・あの、目が痛いんですけど・・・

バフバフバフ・・・すぅーっ・・・目が・・・バフバフバフ・・・はぁーっ・・・

目・・・・・・ZZZZZZzzz・・・。

感覚としては、昔流行った悪い遊びの「頚動脈を締めて落ちる」のと似ています。

たしか、数を数えて下さいって、言われたかなぁ。

10も数えないうちに意識は無くなってましたね。

目は痛かったけど。

 

痛さで目が覚めました。

物凄く痛いです。

身体のどこを動かしても痛いです。と言うか響きます。

その上、右手に血圧計、左手に点滴、鼻に管、ちんちんに管(これは違和感が無くなってる)と、ほとんど身動き出来ません。

横を見ると妻が座っていた。

「あのね、切っちゃったんだって」

当たり前じゃん。手術したんだから。

「届かなかったんだって・・・」

何が?まさか内視鏡が?

ってことは、切腹したの?

ふふふ。ははは。がっはっはっは!

穴開けた割りには痛いと思ったぜ!壇○!出てこい!

と思ってたら本当に来た。

「いやぁ〜わりぃ、わりぃ。

ギリギリ大丈夫と思ったんだけど

無理だったわ。がっはっは!」

・・・(T_T)・・・もう、いいよ。済んだことだし。

殴りかける元気ないし。でも、痛いよ。

はい、ここで20針、合計95針

 

 手術当日は病室ではなく、看護婦詰所近くの回復室に泊まります。

と言っても病室の向かいでしたけど。だけど、眠れません。

ずっとパイプ椅子に座って付き添ってくれた妻もほとんど眠っていませんでしたけど、

この痛さの上に血圧計が数分ごと自動的に、ンゴゴゴゴッと作動するので気になってね。

うとうとする程度です。鼻の管が口元でうざったいし、咽にはそれがずっといるし。

看護婦さん、これなんとかならんのかね?ならないそうです。

最低でも明日の朝までは外せないんだって。

全身麻酔をすると意識は目覚めても、内臓全部が一端お休みしてしまってるので、正常に機能しだすのには時間がかかるらしいです。

早く外しすぎると吐いたりするとのこと。

吐くなんて普通でも楽じゃないのに、切腹してる場合、かなり辛いですよ。

同じく、咳やくしゃみもです。

とにかく身体のどこかに力が入ることは全部です。

 

 入院前に随分と脅されて煙草を控えさせられました。

原因はタンです。煙草を吸う人はタンが多く出るんです。

タンがからんで咳払いした日にゃ涙が出るほど傷に響きます。

手術前1ケ月と言われたのに、我慢できずに3週間禁煙しました。

これでも喫煙するようになってから最長記録です。やめようと思ったことなかったしね。

手術後も許可が出るまで吸えません。結局、1ケ月禁煙しました。

許可が出て久々に吸った時は、頭がクラクラしていい気持ちでした。

咳は我慢できても、くしゃみには苦労しました。

ご存知の方もいると思いますが、私のくしゃみは人一倍大きいのです。

意識しても小さく出来ません。

極力我慢しましたが数回してしまった時は、傷口がバックリ開くような感覚に襲われましたね。

 

 清々しくない朝を迎えました。気分は最悪です。

足の手術よりずっと痛いです。予想以上です。

所詮、手足は末端なんですね。そこさえ動かさなければなんとかなります。

しかし、胴体はそうは行きません。どこを動かしても影響するのです。

それなのに看護婦さんから信じられない言葉が!

「自分で歩いてベッドまで戻って下さい」

うそぉ〜ん。切ってから丸一日経ってないのよ。

「みんなするんですよ」えぇ〜、それって内視鏡手術の人じゃないのぉ〜

「内蔵を早く目覚めさせるには動かなきゃ駄目なんですよ」

どうしても歩けって言うのね。

じゃ、せめて鼻の管抜いて!「まだ、早いんじゃないですか?」大丈夫です。何とかなります。

ずるるるる。ひゃ〜っ!スッキリ!思いきり鼻をかみたいけど出来ない。

「じゃ・・」あ、歩くのね。ちょっと、待ってね。よっこらしょ。

あ、ちんちんの管と点滴はついたままなのね。

うぐっ!痛い!超スローモードでしか動けないよ。

たった数メートルがフルマラソン位に感じたね。大袈裟だけど。走ったことないくせに。

 

 ベッドに辿り着きました。冬なのに脂汗びっしょり。

まぁ、病院って年中暑いけどね。日中もただひたすら痛さを我慢するばかり。

痛み止めの注射もあんまり効かない。以前のような強い(と思われる)注射とは違うようだ。

夕方、小心者の私は妻に言った。「お願いだから今晩も付き添って」妻は嫌々ながら承諾してくれた。

本当に情けない。

病院からは一晩付き添えば完全看護だから大丈夫と言われていたのに。

妻がずっとそばにいるだけで、こんなに安心出来るんだと再認識する。

それからもほとんど毎日通ってくれた妻には言葉に出来無い位、感謝しています。

ありがとう。でも、逆の立場なら二晩は付き添えないから。

 

 手術の場合、大抵肉親が立ち会います。と言っても出産じゃないんだから手術室には入れません。

手術後に手術の内容や経過を説明するのと、切除の場合はその切除した部分を見せられます。

妻は摘出された私の胆嚢を見て思ったそうです。

 

 

 

 

 

「美味そう」と。

正油につけて食べたいとも言ってました。

石は記念に貰いました。風邪薬のような瓶に入ってます。

人によって様々な色や形なのですが、私の石は真っ黒で表面がツヤツヤしてて綺麗です。

ただ、検査時と数が違います。8ミリ以上のが7〜8個です。

とてもじゃないけど、薬や食事療法で解決するレベルではなかったそうです。

 

 回診時にガーゼや包帯を取り替えますが、痛くて身体が起こせないので、

自分の目で傷を見たのは3〜4日経ってからでした。

お見事!みぞおちの上あたりからヘソまで縦にバッサリと巨大百足がいます。

おいおい!松○整形外科の爺と一緒か!縫い目が大きいよ!

こんなもんなのか?

たしか評判のいい先生なんだよな!肉が厚いから?

まぁ、いいや。

あれ?ヘソの下と右脇腹から太い管が出てるよ?何これ?

なんだか内蔵から出る汁があって、そのためなんだって。

ふ〜ん。ストローみたいにフゥーッて吹いたら内蔵の間に空気入るのかな?

汁が出なくなったら抜くんだって。

 

 ちんちんの管を抜きました。尿瓶にするのは馴れたものです。

看護婦さんに男性の場合は逆さまにした方がってのを教えたら喜ばれました。

歩けるようになり、自分でトイレに行ったときに思ったのですが、カテーテル入れる前よりもオシッコの出がよくなりました。

ずっと管入れてたからかな?他の男性患者に聞いても同意見でした。

おじさん連中が若返ったようだと子供のように喜んでました。

 

 鼻の管を抜いたのは、やはり早かったようです。

もう、毎日吐きまくり。吐くもの無くてもゲーゲーだもの。傷に響くし。もー最悪。

 手術から4〜5日経つと無理してでも歩かされます。

その方が回復も早いんだって。意味もなく(あるけど)廊下を往復します。

腹をおさえながらヨロヨロと。他の知らない患者から「よっ!あんちゃん、頑張れよ!」と声がかかります。

お願いだから放っておいて下さい。お気持ちだけで充分です。

影腹ってこんな感じなのかな?

 

 一週間で抜糸の予定が肉が厚いってことで11日目になりました。

足の時よりは痛くなかったですな。

でも、腹の管は二週間以上経ってから抜きました。

麻酔は無しです。ただ、引き抜くだけ。

「癒着してたら痛いよ」どきっ!癒着と言えば、足の時に!幸いしてませんでした。

痛くはないんだけど、そのまんま内蔵から何か引きずり出されるような感覚です。

3センチ位の傷(穴?)だけど、特に縫うわけでもなく絆創膏貼るだけ。

ヘソの下のは毛が生えてることもあり目立たないけど、脇腹の方は今でもクッキリです。

何か表面だけくっついてて、力をこめて指で押すとブッと入りそうっす。

 

 基本的に制限のない整形外科と違い、内臓系の病気の場合は食事が酷いよね。

まるで病人食。病人だけど。

術後2日目だったかな、やっと食事にありつけたの。それも全粥。

知ってますか?全粥って。

最初、米のとぎ汁かと思ったよ。

米の形が無いの。その後、八分、六分、四分・・・と進み、

普通のご飯に辿り着いたのは手術二週間後ですわ。

嬉しかったなぁ、普通のご飯。ありがたや、ありがたや。

 

 その後は順調で約1ケ月で退院しました。

胆嚢はありませんが、元々お腹こわしやすいので特に変化はありません。

現在、4年以上経過していますが縫い傷はクッキリな上に、真っ直ぐではなくなってきてます。

どうなってるんでしょ?

 

それに「100針への道」と銘打ってるわりに95針です。

5針足りません。

出来ればもうメスは入れたくないですけどね。

メスには入れたかったりする(おやじモード)。

 みなさん健康には気をつけましょうね。(^_^)

 と言いつつ煙草に火をつけるのあった。ぷはーっ!・・・