第1話 「尿意」

 

尿意で目が覚めた。

「マック・・・」

・・・ピッ・・・

愛想のない音だ。

金さえあれば、ヒューマン型美人アンドロイドを買って、毎朝やさしく起こしてくれるんだけどねぇ。

今は市営住宅に標準のコンピュータ「マック」で我慢するしかない。

「オシッコ〜・・・」

・・・ピッ・・・

膀胱の中の液体は下水装置に転送され、浄化された後、上水装置に蓄えられる。

さて、もう一眠りするか・・・ん?

「マック!今、何時だ?」

・・・ピッ・・・8時18分デス・・・

ちっ!セットした時間過ぎてるじゃないか。

そして、いつもと同じ1日が始まる。

 

ここは日本。

と言っても地球ではない。

正確に言うと「日本星」だ。

現在、地球に住んでいる人類はいない。

2053年の第3次世界大戦で使われた核兵器のために環境は激変し、総人口も1/5になった。

しかし、2063年のワープ航法開発で各国は宇宙開発とは名ばかりの侵略を始めた。

Mクラスの星を見つけるなり、その星に国の名前を付け、国民を移住させた。

地球からは数万光年離れてるらしいが、日本星生まれの俺にとってはどうでもいい話だ。

学生時代、全く勉強しなかったせいで、宇宙史も新日本史は弱いのだ。

まぁ、とにかくご先祖様は400年以上前にこの星に移住したって訳だ。

そう、今年は西暦2503年なのだ。

 

つづく