第2話 「出勤」
本当はトイレを使った方が安上がりだ。
転送はコストが高く、光熱費も馬鹿にならないのだ。
でも、楽だし、つい使ってしまう。
オートにしてる人もいるから夜尿症も無くなったし、オムツも必要ない。
しかし、大きい方まで転送する便秘の連中は肛門括約筋が衰え・・・
いや、考えるのはやめておこう。これから朝飯を食うんだから。
余計なことを考えすぎたらしい。
ソニック・シャワーから出ると
「・・・ピピッ・・・mavis!・・・仕事ニ遅レル!・・・」
なに!今朝も朝飯抜きかよっ!
俺は急いで服を着ると転送ターミナルに走った。
毎朝のことだが、俺のような連中が多過ぎる。
ターミナルは行列を作ってる。
完璧、遅刻だ・・・
もう少し稼ぎが有れば、あんなボロボロの市営住宅じゃなく、分譲マンションか郊外の一軒家に住んで、直接転送出来るのに・・・
日本星には北海道大陸、本州大陸、四国大陸、九州大陸があり、ご丁寧に地球の日本と同じ地名が付けられている。
公用語は日本語だけど、生まれてすぐ耳に自動翻訳機を埋め込んでいるので、他の星(国)の外星人とも普通に会話出来る。
大昔には学校で英語の授業があったらしいけど、今は当然無い。
俺は北海道大陸に住んでいるが、会社は本州大陸の東京だ。
シャトルなら数分だが、転送なら一瞬で着く。未だに転送嫌いな連中もいて、毎朝早起きしてシャトルを利用しているようだ。
それでも遅刻するとは、きっと遺伝に違いない。
「やっと俺の番か・・・」
出社時間の9時は過ぎている。
俺はタッチパネルの「START」に触る。何故、英語なのは謎だ。
網膜パターンを読込ませると、予め登録してある行き先のリストが表示される。
会社を選び、再び「START」に触れば転送開始だ。
転送記録は全て記録されていて、犯罪者の逃亡等に役立てられる。
同僚のgatesは、それで彼女に浮気がバレてスキンヘッドにされたっけ。